2005年11月19日

カメラマンのウデがいらなくなる日

写真はとても便利にシーンを記録しておける発明品ですが、大きな問題があります。それは、実際の光情報を2次元に写像しているということです。その何が問題かというと、写真の撮り方にテクニックが必要になってくるということです。つまり、写真をとる(2次元写像する)からには、シーンにおける光情報のうち、どの情報を選択しどの情報を捨てるかを選択する機会が一度きりしかないということが問題です。逆にいえば、その選択に長けた人がカメラマンということになります。

具体的にいうと、写真のピントを合わせるのはカメラマンの仕事です。カメラはカメラマンの思い通りに光情報を取捨選択してピントをあわせます。下手な人が取る写真はピンボケしていますが、それはどの光情報に焦点をあわせるべきかを正しく判断できなかったということを意味します。だから写真が2次元写像である限り、カメラマンが職業として成り立ちます。

しかし、その写像(情報の取捨選択)を行わなくてよくなったらどうでしょう?写真を撮った数日後に改めて写真を見直し、もう一度ピントを合わせることができたら、ピンボケ写真をとってしまうカメラマンも、狙ったピントで写真を取れるカメラマンも、ウデに差がなくなります。そんなカメラあるのでしょうか。

後から「ピンぼけを直す」のも「キレイなボケを作る」こともできるカメラ

スタンフォード大学の研究者が開発したこのカメラは、写真を撮ったあとでピントの調整もできてしまうのです。何をしているかというと、

レンズと受光素子の間に小さいレンズを挿入することによって、素子に堆積された光の量だけでなく、光線それぞれについて光量を記録することができる。記録された光線を再ソートすれば、違うところに焦点を当てた場合の画像のシャープを計算から求めることができる


ということらしいです。カメラの中身についてはあまり詳しくないですが、元ページ動画を見ると、よくわかります。見事にピントを調節していますね。

この技術の本質は何かというと、写真を撮る際に取捨選択した情報(=奥行きのようなもの)を取捨選択せずに記録できたということです。つまり、写像によって失われる情報が1次元減ったので、それだけ現実のシーンに近いものを記録することに成功した、といえます。

カメラマンのウデはその判断力でシーンからどの情報を残して記録するかという技術ですから、情報の取捨選択をあとでゆっくり、見る人の自由に調節できるようになるとすれば、カメラマンは不要になります。発表されたものは奥行き情報(のようなもの)を記録できるようになっただけで、現実のシーンをそのまま完全に記録できるようになったとはいえません。しかし、完全に写像しなくてよくなるとすると、カメラマンには肉体労働としての撮影作業しか残らなくなります。

技術は人のインテリジェンスを駆逐するか。先が楽しみです。それにしても、スタンフォードすげー。SIGGRAPHすげー。
posted by かめたわし at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(2) | 日記
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